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<音声の波形の生成を理解する>


その5: 2管声道モデルと乱流音の代用ノイズ源と爆風インパルス波による破裂音「が」「か」音の生成のこころみ



   先回の乱流音を代用するノイズ音源を使って摩擦音の「さ」音の生成に続き、破裂音の「が」「か」音の生成の実験をおこなってみた。
破裂音は、爆風(破裂)とそれに続く乱流音源と、声帯を振動した音源による共鳴音を経由して母音の「あ」の部分から構成する。

爆風(破裂)の作成

爆風現象によって生成される波の周波数特性は、1/fの特性をもつといわれている。
1/fの特性をそのまま使うと、低域でも振幅が小さくなりすぎて共鳴効果があらわられにくくなるため、 DCからある周波数まではフラットな特性でそれ以降は1/f特性に近いものを、 ヒルベルト変換を使って最小位相特性をもつインパルス応答の波形として生成した。
下図は、生成した波形と周波数特性である。音(wav)になる。



乱流音の作成

乱流音を代用するノイズを、先回の摩擦音のときと同様に、パーリンノイズの手法を応用して作成した。
摩擦音との違いは、低くめの周波数成分からなる。
下図は生成した波形で、音(wav)になる。



爆風インパルス波と乱流音の代用ノイズの混合

爆風(破裂)とそれに続く息によって乱流音源が発生すると仮定して、上記の爆風インパルスの波形と乱流音の代用ノイズの波形を混合する。
下図の青色が混合した波形である。音(wav)になる。


共鳴効果の付加

先回の摩擦音のときと同様に、2つの管(チューブ)をつなぎ合わせた模型を使って、乱流音源とその周囲による共鳴効果の付加を行う。
下図が上記の混合波形に共鳴効果を付加した波形である。共鳴効果が異なる2例を示す。音resona0(wav)になる。


声帯を振動した音源による共鳴部分と母音部分の作成

時間経過とともに管の断面積と長さが変化する、2つの管(チューブ)をつなぎ合わせた模型を使って、 声帯を振動した音源による共鳴音を経由して、母音の「あ」の部分を生成する。
ニュートラルの状態から、「あ」の発生の状態(target)まで、時間変化させる。


管の断面積と長さの時間変化を下図の示す。初めの、管の反射がまだない1ピッチ分を経過した後から、変化を開始するようにしている。



濁音

濁音の要因の一つは共鳴効果の強弱と考えられる。
そこで、次の様に定義した、管を通過するときに生じる損失を導入して、共鳴の強さを制御する。

例えば、下記の周波数特性のように、損失を変化させることにより、共振点のピーク値を変化(強弱)させることができる。



また、声帯の振動による音源の立ち上がり方は、急進ではなくゆっくりと変化させるようにした。(下図の赤い色の波形)


後続の母音部分として、濁音向けの損失がないもの(共鳴効果が強いもの)と非濁音向けの共鳴効果を弱めたものの2つの波形を作成した。
下図は損失がないもので、音(wav)になる。


下図は損失をつけて共鳴効果を弱めたもので、音(wav)になる。


合体には、初めの、管の反射がまだない1ピッチ分を経過した後の、緑色の部分を使う。


波形の合体

爆風インパルス波と代用ノイズ音の混合に共鳴効果を付加したものと、上記の波形を後続に滑らかにつないで、合体する。
下図は、後続に損失がないもの(共鳴効果が強いもの)を合体した波形である。この波形の音は「が」の音に似た音(wav)になる。


また、下図は、後続に共鳴を弱めたものを合体した波形である。非濁音化した音(wav)になる。





参考までに、上記の波形の生成に使ったpythonプログラムをおいておきます。 使い方はzipファイルを解凍した中にあるREADME.txtを見てください。



No.2   2019年2月18日